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東京地方裁判所 昭和44年(特わ)3号 判決

本店所在地

東京都台東区上野六丁目八番二〇号

株式会社 田島屋

(右代表者代表取締役 田島定郎)

本籍

東京都台東区竜泉三丁目一〇三番地

住居

同都同区上野六丁目八番二〇号

会社役員

田島定四郎

明治三九年一月八日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官上田政夫出席して、次のとおり判決する。

主文

被告会社を罰金三〇〇万円に、

被告人田島定四郎を懲役三月に、

それぞれ処する。

ただし、被告人田島定四郎に対し、本裁判確定の日から二年間、右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となる事実)

被告会社は、東京都台東区上野六丁目八番二〇号に本店を置き、菓子の卸販売等を営業目的とする資本金一、九八〇万円の株式会社であり、被告人田島定四郎は被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人田島は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外して簿外預金を蓄積し、あるいは架空買掛金を計上するなどの不正な方法により所得を秘匿したうえ、昭和三九年一二月一日より同四〇年一一月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得が四、九〇六万九、五九七円あつたのにかかわらず、昭和四一年一月三一日東京都台東区東上野五丁目五番一五号所在所轄下谷税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が一、五〇八万二、〇五二円でこれに対する法人税額が五三六万五、二四〇円である旨の虚偽の法人税額確定申告書を提出し、同事業年度の正規の法人税額一、七九四万六一〇円と右申告税額との差額一、二五七万五、三七〇円を法定納期限までに納付せず、もつて右差額の法人税を免れたものである(なお、右実際所得金額の算定は、別紙修正貸借対照表のとおりである)。

(証拠)

判示事実は、以下の各証拠(括弧内は、とくに関係ある勘定科目の番号)を総合して認定する。

一、登記官作成の登記簿謄本

一、大蔵事務官の田島晃、田島弘、吉岡勝、大川五郎に対する各質問てん末書

一、大蔵事務官の渋谷政男に対する質問てん末書

一、飯塚新平の検察官に対する供述調書

一、被告人田島の当公判廷の供述、同被告人の検察官に対する供述調書二通

一、被告会社代表取締役田島定四郎作成の昭和四二年一二月一六日付(〈2〉)、昭和四三年一月一一日受付(〈11〉)各上申書

一、被告会社専務取締役田島力作成の昭和四二年一二月一八日付上申書

一、大蔵事務官の田島力に対する昭和四二年六月六日付(〈2〉)同月一九日付、同年一二月二日付(〈9〉、〈22〉、)同月七日付(〈1〉)、昭和四三年一月二八日付(〈13〉)、同年二月一二日付(〈22〉)各質問てん末書

一、田島力の検察官に対する昭和四三年一二月一九日付、同月二〇日付(〈9〉、〈22〉、〈35〉)、昭和四四年一月七日付各供述調書

一、被告会社専務取締役田島力作成の過大買掛金および架空買掛金についての(〈22〉、〈46〉)、簿外棚卸商品の確定についての(〈9〉)、簿外普通預金についての(〈2〉)、仮名借入金および支払利息についての(〈12〉、〈23〉)各上申書

一、上杉博一の検察官に対する供述調書(〈22〉)

一、大蔵事務官の田中良夫に対する質問てん末書(〈2〉)

一、大蔵事務官松崎且作成の仮名借入金および支払利息計算書(〈12〉、〈23〉)、同人作成の簿外預金および受取利息調査書(〈2〉)、同人作成の簿外棚卸商品計算書(〈9〉)

一、東京都民銀行新宿支店支店長物部甲子男、伊藤則次、日本勧業銀行池袋支店支店長中島大八作成の各証明書(〈2〉)

一、富士銀行千束町支店支店長鈴木天津男作成の証明書二通(〈2〉)

一、日本勧業銀行浅草支店支店長大川四郎作成の証明書(〈2〉、〈12〉、〈23〉)

一、安田信託銀行下谷支店支店長代理青木敏彦作成の取引内容についての回答書(〈11〉)

一、安田信託銀行下谷支店支店長三枝憲文作成の証明書二通(〈11〉)

一、大蔵事務官竹下文男作成の39・11期法人税額計算書(〈21〉)

一、大蔵事務官宮寺福平作成の証明書(〈28〉、〈29〉、〈30〉)

一、領置にかかる40・11期法人税額確定申告書一綴(証第一号)40・11期法人税額修正確定申告書一綴(証第二号)41・11期日計表四袋(証第三号〈1〉、〈9〉)、41・11期日計表三綴(証第四号)、損益計算書等一袋(証第五号〈9〉)、40・11期たな卸表一綴(証第六号、〈9〉)、40・11期商品仕入計算書二綴(証第七号、〈22〉)、40・11期雑仕入計算書一綴(証第八号、〈22〉)、確認書一枚(証第九号、〈35〉)、40・11期経費台帳一綴(証第一〇号、〈35〉、〈21〉)、公課領収書一袋(証第一一号、〈21〉)、税金領収証書等一綴(証第一二号、〈21〉)。

(法令の適用)

判示事実は、被告会社につき法人税法一六四条一項一五九条一項に、被告人田島につき同法一五九条一項にそれぞれ該当するところ、被告人田島に対し所定刑中懲役刑を選択し、所定罰金額刑期の範囲内で、被告会社を罰金三〇〇万円に、被告人田島を懲役三月にそれぞれ処するが、被告人田島に対しては刑法二五条一項一号により本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとする。なお、以上の量刑に当つては、とくに、被告会社においてすでに修正申告をして本件逋脱税額を付帯税とともに完納していること、被告人田島において本件の査察を受ける前から脱税行為を自発的に中止しており再犯の虞れも少ないこと、被告人田島は前科もなく改悛の情が顕著であること等の情状を斟酌した。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 吉永忠)

別紙

修正貸借対照表

株式会社 田島屋 昭和40年11月30日

〈省略〉

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